初夏の風景、1から4
1.
日課のラジオ体操。体の側面を伸ばした後、腿をぴしゃぴしゃ叩くおなじみの動き。
ぴしゃぴしゃの音がいつもより軽やかで、夏用のズボンを履いているのをあらためて認識する。
ポリエステル73%、麻23%。春になっても朝いちはズボンの下にレギンスを重ねずにはいられない私は音の軽やかさひとつとってもうれしい。
2.
庭の向こう側の水路脇にナンキンハゼの木と柳の木が自生していて、どちらも見上げるほどの背丈だ。
ナンキンハゼの木はハート形の葉っぱをたわわにつけて、冬と比べるとさも重そうにしているが得意げでもある。
その後ろに生えて、背丈においては上回る柳の木に異変が起きている。
葉が見えない。そのうち茂らすだろうと思って待っていたが、目をこらしても葉が確認できない。葉をつけないのはおかしい。
口に出したら、娘が「つけたくなかったんだよ」とあっさり答えた。なるほどそうかもしれない。そういえば、今年は二群ある牡丹の花の片方が花を咲かせなかった。そういう年もあるのだ。
3.
息子が小学校のプール掃除をした日、掃除で使用した水着を洗ったら水が緑色になった。
プール掃除とちょうど同じ頃、私は庭のえびす様の像の水入れの、藻にまみれていたのを洗っていたのだった。
学校でプール掃除があることは知っていたが、そう強く意識していたわけではなかった。それでも行動が影響されることはあるものらしい。
4.
かたくひからびた、小指の爪より小さなそら豆。
色は鮮やか、皺もない。さやの中にいた頃の面影をまだとどめて。黒いすじを覆う若葉色の、芽のようなものは、さやから栄養をもらうためのへその緒。みずみずしい。
しかし一昨日の夕食どき、誰かの椀から落ちたものだった。
私はそれをごみ箱に捨てた。せめて庭に捨てて、自然の循環へと送り出せばよかったかもしれない。
そう思った翌日に、屋外の流しの脇によく似たものを発見した。なぜこんなところに小さなそら豆、……それは腹を天に向けて息絶えているカメムシであった。可憐で控えめな、宝石のような死のすがた。