八頭司昴と川植隆一郎の二人展が、一年ぶりに画廊 憩ひ(やすらい)で開催されている。二人の持ち味は違うが、絵を見る者に、“あなたの物の見方は正しいの?あなたの見方が唯一無二の見方なの?”と優しく揺さぶりをかけてくる点が共通している。鑑賞した後は、自分の価値観が一周回して新しい世界が始まったような爽快感があった。
交換日記から始まった展覧会だという。一年前の展覧会では八頭司と川植の交換日記だったが、今回はキュレーターの茶圓彩が二人の作家それぞれと交換日記を行った。交換日記、とは、古臭くも懐かしい響きである。成人した男女間で行われるのがなんとも新鮮だ。
ページをめくれば昨年の豪雨災害への言及もあるし、川植のアメリカ滞在の様子も描かれ、さらにはコロナウィルスの問題が世間を次第に飲み込んでいく様子が記録されている。電車の中で書いているため字が乱れているなど臨場感があるのも楽しい。日常を切り取って発信する行為はSNSで多くの人がやっているが、手書き文字の交換日記では、日常を疾走する3人の様子がより生々しく伝わってくる。